エネルギー流体工学研究室

東京大学大学院工学系研究科エネルギー・資源フロンティアセンター
システム創成学専攻

研究内容

  メタンハイドレート資源の開発

世界の大陸縁辺部海底下と極域にはメタンガスと水からなるメタンハイドレートが広く分布しており、新しいエネルギー資源として期待されています。日本周辺海域には約7.4兆m3のメタンガス(国内ガス消費量の約100年分に相当する量)がメタンハイドレートとして存在すると推定されており、経済的に採算の取れるガス生産手法が確立すれば日本のエネルギー問題解決に大きく貢献します。増田研究室はメタンハイドレート資源開発コンソーシアム(MH21)に参加し,メタンハイドレート層からのメタンガス生産挙動を予測するコンピュータプログラム(メタンハイドレート貯留層シミュレータ,MH21-HYDRES)の開発を産業技術総合研究所・日本オイルエンジニアリングと共同で行っています。

  持続型炭素循環システムの構築

炭素は主に二酸化炭素、炭酸塩、有機物の形態をとりながら大気圏、海洋圏、地圏を循環していますが、近年の人間活動は炭化水素の開発を通じて年間約35億トン(炭素換算)の二酸化炭素を大気圏に過剰排出し、自然の炭素循環を大きく乱しています。環境保全の観点からは「大気圏に過剰排出された二酸化炭素を本来存在すべき地圏に移動させ、従前の形態である炭化水素に変換する」ことが自然調和的な行為です。変換された炭化水素は再びエネルギー源として利用でき、エネルギー枯渇問題への一つの解を与えることにもつながります。すなわち、炭素循環に持続性を持たせることによって、環境とエネルギーに相補的なシステムを構築することができるのです。そのための要素技術として、佐藤・小林研ではCO2地中隔離の最適化と遠隔モニタリング、バイオ技術を用いた CO2のメタン変換、エネルギー資源開発の効率化などを研究しています。

  掘削エンジニアリング

深部地下にアクセスする坑井掘削技術は、石油・天然ガス・地熱などの流体資源の探査・開発、CO2の地中隔離、温泉の探査・開発、地震予知・地震メカニズム解明のための科学掘削において重要な役割を担っています。大偏距・水平坑井掘削、坑跡制御掘削、大水深掘削、マルチラテラル坑井仕上げなどの掘削技術の進歩が、従来不可能と言われた北海の油ガス田開発を可能にしました。在来型石油・天然ガス資源を始めとしてシェールガスなどの非在来型天然ガス、地熱資源の開発、さらには国際深海科学掘削計画(IODP)/国際陸上科学掘削計画(ICDP)における科学掘削での社会的なニーズが高いことを踏まえて、坑井掘削のエンジニアリングに関する研究を進めています。現在は、坑井掘削用ビットの振動解析による掘削最適化、大偏距・水平坑井掘削時のカッティングス運搬挙動などの混相流解析に関する研究を行っています。

  統合型流体シミュレーション技術

流体問題における数値解法としては、汎用性の高さから有限差分法(FDM)が多用されていますが、汎用性の追求は概して計算精度と計算効率を犠牲にする傾向があります。事実、FDMは数値分散や格子方位の影響を受けることが知られています。私たちが扱う流体問題は多種多様であり、一つの解法があらゆる問題に適しているということはあり得ません。対象のスケール、形状、性状を把握した上で、問題毎に適した数値解法を選択することが重要なのです。また、それぞれの解法を排他的関係に位置づけるのではなく、上手に使い分け、あるいは同時に適用し、ある流体挙動を多側面から攻究することも大切です。このような観点から、FDMはもちろんのこと、複素変数境界要素法、境界要素法、格子ボルツマン法、CIP法などを統合的に利用したシミュレーション技術を開発し、流体挙動の解明に取り組んでいます。